能登地域にも春の気配が感じられる、この頃。復旧作業が進む道路の傍らには、あちこちでフキノトウが若い緑の顔を見せ始めていました。
そんな珠洲市で3月15日、小学生を中心とする子どもたちを対象に、オリンピック強化指定選手ら11人たちによる「スポーツ体験会」が、同市上戸町の市民交流拠点・「すずっこひろば」で開催されました。
主催は、「スポーツを止めるな」と公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)で、石川県とJOCとの包括連携協定に基づき、珠洲市・羽咋市にて支援プログラムを実施しました。昨年から、JOCオリンピック強化指定選手らが参加する「スポーツ体験会」の取り組みを開始し、輪島市門前町や穴水町にも訪問。地元の学生や住民と対話を重ね、今回は3回目の活動となります。
活動について、スポーツを止めるなの共同代表理事・最上紘太は、「能登地震の発災によって、学校のグラウンドに仮設住宅が建設されるなどして、子どもたちの遊び場が失われ、体を動かす機会がなくなりました。そんな現状に対し、スポーツで社会にアプローチしたいと考えました。選手たちにとっても、競技へのファンづくりや学びにつながる。スポーツの力が、さまざまな人を成長させると信じています」と力を込めます。
このたびの支援プログラムは、地元の珠洲市で活動する特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(※注1参照)が運営する市民交流施設「すずっこひろば」の提供、一般社団法人NOTOTO.(※注2参照)による開催プログラムの企画や、アスリートたちの滞在先など、能登現地との各種調整の支援を得て、ともに実現しました。
何とこの会場で、2年前に訪問した宝立の避難所で出会った親子と、メンバーが偶然にも再会しました。
オリンピック強化指定選手が集結!すずっこたちが、いろんな競技を体験
イベントには、JOCのオリンピック強化指定選手ら11人が参加。番所駿斗【体操(トランポリン)】、芹野泰良マックスナー【アイスホッケー】、幸田朋優【フェンシング】、山田航大【山岳・スポーツクライミング】、矢澤亜季【カヌー】、川野隼【スケルトン】、河合利亜斗【テコンドー】、岩井麟【アメリカンフットボール(アメフト)】吉田向希・田井慶音・赤城明花【クリケット】(敬称略)と、そうそうたるメンバーたちが集結。子どもたちにスポーツの楽しさを伝えたい!との熱い思いを胸に、自ら志願して珠洲市にやって来てくれました。
JOCの渡邊マーロックさん、谷本歩実さん【元柔道日本代表】や、水鳥寿思さん【元体操日本代表】も、選手たちの活動を支援します。
それぞれの競技の説明や実演をした後、子どもたちが体験することに。3チームに分かれておよそ30分間、競技にチャレンジしました。
はじめに、アメフトとテコンドーを体験。岩井選手が先導し、準備運動を行いました。子どもたちは手をグルグル回したり、ボールを投げたりして体をほぐしていきます。アメフトのキャッチボールを始めると、すかさず選手たちが「ナイス!」「いいね!」と声を掛け、子どもたちの緊張がゆっくりとほどけ始めます。
選手たちから道具の使い方を教えてもらったり、声をかけられたりすると、みるみるうちに笑顔に。子どもたちが素直に興味を示して、果敢に挑戦する姿が頼もしく感じられました。
フェンシングの幸田選手は、剣の持ち方や構えといった基本動作や、前進・後進の仕方、突きなどの攻撃方法を紹介。子どもたちは、真剣な表情で、習ったことを実践します。
そして、実戦を行うことに。子どもたちの本気モードにスイッチが入り、素早く対戦相手に突き込んでいきます。周囲で観戦する大人たちも、固唾を飲んで見守ります。技が決まった時には、大きな歓声が上がりました。
子どもたちに指導を終えた幸田選手は「教えるのは初めてでしたが、うまくできてよかった」と安堵した様子。「みんなが笑顔で参加してくれて、元気をもらいました」と嬉しそう。
金沢市出身で、体操(トランポリン)の番所選手は、「子どもたちに元気を届けたかった。自分も元気を分けてもらったので、明日からの練習をがんばれます」と感動した様子で話し「いい結果で、地元に返していきたい」と決意を伝えてくれました。これも”スポーツの力”ですね。
クリケットの体験では、田井選手が子どもたちに、ラケットの握り方などをていねいに手ほどきします。
JOCの水鳥寿思理事は「社会貢献活動をしたいが、どのようにしていいかという声がアスリートから挙がり、能登復興支援に取り組もう、との思いが始まりでした」と、活動のきっかけを語ります。そうして、どうしたら子どもたちが楽しめるか、選手たちがアイデアを出し合って、体験教室を行ってきました。さらには「単発的なものではなく、継続して支援していくことが大切」と考え、今後も活動していくと話しました。
教室が終わった後、すっかり打ち解けた様子の子どもたちと選手が、膝を突き合わせ、いろんな話をしました。
「誕生日はいつ?」「どんなスポーツが好き?」など、他愛もない話がつきません。
選手や子どもたちの表情はとても優しくて楽しそう。穏やかな日常のひとときが流れていました。
みなさん、ありがとうございました!
※注1 特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県、大西健丞代表)は、能登地震や奥能登豪雨による公共施設の被害や、仮設住宅の増加により、子どもたちの遊び場や交流の場が失われたことを受け、親子が安心して暮らせる環境づくりを目指し、2025年4月から市と連携し、交流拠点の「すずっこひろば」を運営しています。
※注2 一般社団法人NOTOTO.(石川県、安江 雪菜 共同代表・松中 権 共同代表)は、能登半島地震を機に2024年4月に設立された中間支援組織です。能登の人・文化・多様性を大切にしながら、地域の復興を中長期的に支援することを目的に、まちづくりや交流機会の創出など幅広い活動を展開しています。
