コロナ禍における新たな部活動のカタチに挑戦
『不完全燃焼を完全燃焼に』を合言葉に、スポーツを止めるなが実施した“短期集中型オンライン合宿プログラム「HANDS UP CAMP」”についてご紹介します。
トップコーチから学ぶ戦略的・論理的思考、今こそ求められる学生アスリートのスキルアップとは何か。
連日の新規感染者数の更新に、終わりの見えない緊急事態宣言。夏合宿の中止や練習時間の制限に部活動の現場からはあきらめの声が漏れ伝わってきます。
選手指導などで各地のグラウンドをまわる野澤も指導者や選手たちの苦悩を肌で感じていました。
学生スポーツが完全に止まってしまった2020年。
一方、今年に入って学生スポーツは止まってはいないが、平常にも動いていない。
厳しい部活制限が続く公立校と強化を続ける強豪校の間では差が開く一方。
指導者と選手の間にも「しょうがない」というむなしさが漂っています。
野澤は「完全にスポーツが止まっていた昨年よりも閉塞感は強い。まずいぞ」と事態の悪化を懸念。
競技への向き合い方を考えることで学生アスリートも関係者も気持ちを高められるのでは…と、ひらめいたのがオンラインでの合宿プログラム「HANDS UP CAMP」でした。
「夏合宿とは何か?を抽象化した時、『きっかけ」や『契機』であったと気づいた。夏合宿で伸びるのではなく、のちに夏合宿での経験がテコの役割を果たし飛躍的な成長につながる。ラグビーで言えば菅平(長野県)は夏合宿の代名詞。普段とは違う集団生活の中で過ごす濃密な時間からチームや競技に対する意識の変化が芽生えますよね。オンラインでそれを体感できないだろうか」。
野澤の発案に夏合宿の中止を決めた千葉県立千葉高ラグビー部が賛同。
プログラムの最終的なゴールは、選手自身が戦略戦術とアクションプランに対して根拠をもって言語化すること。
学ぶべきポイントは『チームカルチャー』『最先端の技術戦術』『知識を深める思考法』、そして選手同士が共通のベクトルへ進むための『コミュニケーションとリーダーシップ』という結論に至りました。
早速、野澤はその世界でのトップランナーたちに講師を依頼。
そして8月6日、1泊2日の夏合宿が動きだしました。
いよいよ合宿がスタート!
8月6日午前8時半、画面越しに集まる選手たちの表情は硬く、慣れないオンラインでのコミュニケーションに戸惑う生徒もちらほら。
そしていよいよ合宿がスタート!
9時から野澤による合宿の意義を問うセッション、続いて同社団共同代表理事の廣瀬俊朗によるリーダーシップのあり方へと続きました。
クボタスピアーズや神戸製鋼コベルコスティーラーズといったトップチーム所属のコーチたちから学ぶ先進的な戦術。
ラグビーユースコーチの第一人者、里大輔さんからは最先端のムーブメント技術と知識をインプット。
リーダーシップやコミュニケーションを通したチームワークの向上を目指し、それらを繋ぎ合わせてアウトプットするための思考力やゴール設定などなど。
チームの強みや自身の個性、練習の意義を深く問い求める濃密なセッションが選手たちを思考と論理の世界へといざなっていきました。
講師との対話とともにグループワークを繰り返し、時間を増すごとに意識の共有が深まりました。
矢野晴朗副主将は「考える力とはという講義で、『問いを定義し、広げて、くくる。確認することを通して大事なことは何かを考え、評価をする』というプロセスについて学んだ。ラグビーだけではなく、日常生活でも問いは人によって異なる。合宿中のグループワークではみんなの意見を集約して問いを定義することは難しかったが、学んだフレームワークを使うことで最後はまとめることができた」。
野口将大副主将は「合宿ではいろんなことを学びやや整理が追いついていないところがあるが、一番印象に残ったのは勝つ準備の講義です。自分が目標とするベスト4をビジョンとして頭の中にしっかりと思い描くことができた。これからは一日一日、そのビジョンを実現するために努力したい」と目を輝かせていました。
そんな充実感であふれる選手たちの姿に「同じ釜の飯を食う。その感覚を学びでも得られていた」と野澤や講師たちもオンライン合宿に確かな手応えを感じました。
午後9時、初日の最後を飾るのはOBによるチームの歴史や文化の継承。
東京理科大ラグビー部3年の小柴稔輝さんらが県千葉ラグビー部の歴史や価値観を語り、現役選手たちとともにチームのあり方を醸成する時間となりました。
小柴さんは「高校生の頃にこんな学びの合宿があれば、チームも自分ももっと上を目指せただろう」と後輩たちを羨んでいました。
2日目合宿は総仕上げとして各自の学びと目標、チームのあり方をプレゼンテーション。
内田琉主将は「オンライン夏合宿では、ラグビーのスキルにとどまらずコミュニケーションスキルや課題解決の方法も学んだ。今後、チームの目標であるベスト4を達成するために教わった論理的思考力を活かし、何が今必要なのか考え、具体的な行動に移したい。この2日間でチームの意識が変わり、秋の花園予選に向かっていく良いきっかけになった。キャプテンとしてみんなを引っ張り、この変化を継続させていきたい」と熱く語りました。
自らの言葉で表現する力を得た選手たちの姿に、指導に当たる為成伸広監督も「コロナの影響で練習に制限が課される中では、チーム全員がビジョン・目標を共有することが難しかった。濃密な講義とグループワークにより学年に関係なく全員が積極的にディスカッションすることで選手たちは変化のきっかけを掴んだようだ。この意識を持続させるのが大切」とさらなる成長を期待。実りある合宿を終えました。
「HANDS UP CAMP」は現在進行形でアップデート中。
チームや競技の枠を超えて学び合うことで生まれる選手のイノベーションこそが狙いです。
参加チームが増えればその可能性は無限に拡がります。
「このピンチをチャンスに変えてほしい」と野澤もエール。学生アスリートたちの完全燃焼に向け、スポーツを止めるなの挑戦はこれからも続きます。
選手がプレーをアピールするためのオンラインプラットフォーム「HANDS UP」
スポーツを止めるなは、学生アスリートがより良い環境でスポーツに打ち込み楽しめるよう、全力でサポートしています。
その活動の一つとして、学生アスリートが自身のプレーを登録し次のステージの関係者にアピールができるオンラインプラットフォーム「HANDS UP」を開発しました。
全国の先生や監督・スカウトなど次のステージのチームも、動画で自らのチームを学生にアピールすることができます。
「自分の強みはなんだろう?」
「リクルーターはどこを見ているのだろう?」
セルフプロデュースを考えること自体に教育的価値があり、これは誰にでも必要なことだと考えています。
もちろん、次のステージで競技を続けられることになれば、それはとても嬉しいことですが、自ら手を挙げる、動き出す社会になってきている中で、他人との違いを生む努力が芽生えれば、これからの人生を切り拓く力が身につくと思っています。
そんな想いを込めてプラットフォーム名は「HANDS UP」。
手を挙げ、自らの未来をつかみとってもらうという意味を込めて命名しました。