一般社団法人スポーツを止めるな

コラム

1252プロジェクト 日本福祉大学にて、生理とスポーツをテーマに、「1252プロジェクト」のオンライン授業を実施!

こんにちは!スポーツを止めるな広報です。

 2022年8月5日に、生理×スポーツをテーマにした1252プロジェクトの授業「1252Clubroom Workshop! in 日本福祉大学」を実施、160人の女子学生が参加いたしました。

 今回は講師として1252プロジェクトリーダーの伊藤華英(当社団理事)、進行役は推進メンバーの川村知巳で行いました。

 日本福祉大学は1953年に設立。「地域に根ざし、世界をめざす、ふくしの総合大学」をモットーとし、愛知県知多半島の北部・中部・南部のそれぞれにキャンパスを置く大学です。2017年に新設されたスポーツ科学部をはじめ、福祉関係の学部など、地域や社会と密接にかかわる特色ある教育を行っています。今回は同大学の部活動に所属する女子学生向けに授業を行いました。最初に、「よりよい競技生活を送るためだけでなく、競技が終わってからの生活も、よりよく過ごしてほしい。そのために学びましょう」というメッセージとともに授業を開始しました。

 「1252Clubroom Workshop!」では具体的なスポーツと生理について、クイズ形式で積極的に参加していただきながら正しく学んでいただき、最後の質問コーナーでも、活発な質疑応答がなされました。

 最後に、伊藤華英は、「生理にまつわる症状に悩まれているなら、恥ずかしいことではないので婦人科医の先生にぜひ聞いてください。自分のことは自分で守ってもらいたい、そして自分のことを人に伝えられるようになっていく。それが自立していくということになると思います。また自分自身は生理が軽くても、周りの人が辛そうにしていたらぜひ声をかけたり、思いやりを持った接し方をしていただけたらなと思っています」と学生に伝えました。

 <授業後の感想>

「月経について理解を深めることができたし、我慢しなくていいんだと少し荷が軽くなりました。自分だけで解決せず人に相談してみるのも1つの手なのだなと感じました。参考にしたいです。」

「自分はあまり月経について悩んだことがなかったけど、みんなの反応や質問に答えるところを見て結構悩んでる人がいるんだなと実感した。そういった人たちのためにこういう授業を受けれてよかった。」

「男子学生も一緒に受けてみんなが理解できるようになると良いと思う。 恥ずかしい、隠さないといけない事という極端な考え方が薄れるようにしていけると素敵だなと思う。」

「ピルについて興味はありましたが行きづらいと感じており、生理痛は我慢してしまうことが多かったが、痛かったら鎮痛剤を飲む、ピルについて調べてみるなどしてみたいと思った。一度コンディションシートをつけてみて自分が生理によってどんな影響を受けるかを知ろうと思った。また、月経カップやタンポンはあまり試したことがないため、挑戦して自分に合う方法を探していきたい。」

1252プロジェクトでは、今後も女子学生アスリートがスポーツをもっと安心して楽しめるよう、教育・啓発活動を行っていきます。下記の1252プロジェクト紹介映像やトップアスリート経験談コンテンツ「TalkUp1252」、生理とスポーツの教科書を公開している1252プロジェクト公式インスタグラムも併せてぜひご覧ください!

また、生理とスポーツの授業「1252Clubroom Workshop」に興味がある方は、1252@spo-tome.comまでご連絡ください。

■1252projectの公式HPはこちら
https://spo-tome.com/1252-top/

■1252project紹介映像はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=8D0WARPVGZw

■トップアスリートの生理にまつわる体験「Talkup1252」はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=bVYoDobYa9I

■1252 Playbook
「スポーツ×生理の新しい教科書」をコンセプトとした教育コンテンツ、「1252 Playbook(プレイブック)」を2022年3月1日にリリースしました。
(1)女子学生に馴染みがあるInstagramを活用した、(2)楽しく正しいスポーツ×生理の情報を学べる、(3)専門的知見を簡潔に解説するコンテンツ です。
1252project公式Instagramアカウントより、随時発信しております。ぜひご覧ください。

【アクセス方法】
Instagram(@1252project)
https://www.instagram.com/1252project/

 

 

コロナ禍に発足した新たな合宿

 「不完全燃焼を完全燃焼に」。長引くコロナ禍で、いまだに“元通り”とはいかない状況のなか、学生アスリートたちも、部活動を制限される状況が続いている。そうしたなか、一般社団法人スポーツを止めるなが競技への向き合い方を考え、成長や意識改革のきっかけを掴む機会として、昨年スタートした学生アスリート向けのオンライン合宿「HANDS UP CAMP」。前回までのラグビーから、今回はバスケットボールと、競技の枠を超えて、2022年1月30日、同年2月5日の2日間にわたり開催された。

「考え尽くす」知の合宿

 今回は、安田学園・帝京高校バスケットボール部の2校による合同オンライン合宿。トップチームコーチによる講義、OBとの交流、ディスカッションなど、盛りだくさんな内容。インプットとアウトプットを繰り返し、とにかく考え尽くした2日間となった。

 午前8時半、それぞれの場所から、画面の前に集まる学生たち。「スポーツを止めるな」代表理事の野澤武史によるオープニング講義でキックオフ。野澤から示された今回の合宿のゴールは、「根拠に基づいた 自分たちの戦略・戦術・プランを自分たちの言葉で発表する」。インプット中心の1日目がスタートした。同社団共同代表理事の廣瀬俊朗(元ラグビー日本代表キャプテン)からは、リーダーシップのあり方を学生たちに講義。両校のキャプテンを中心に、チーム内でのコミュニケーションの取り方を振り返るとともに、チームをより良くするために何ができるか、選手から多くの意見が出た。

 続く講義でも、問いを定義し考える力の向上、自分の強みを生かしたスキルアップ、チーム分析に基づいた戦略構築、具体的なゴール設定とプランニングなどなど、各セッション、講師からの大量のインプットが贈られる。それに対し、選手たちが食らいつくように考え、対話するという、まるで千本ノックのような、これぞ知の合宿という内容が繰り広げられた。
 夕食休憩前には、OBとの交流会が開かれ、「自分たちの文化、歴史を知る」ということをテーマに、各校OBからチームの歴史や文化が語られた。指導にあたる安田学園の三原監督からは、「チームカルチャーを学ぶことで、自分たちの強み、弱みを自覚することができ、チームへの愛情やプライドが芽生えるきっかけとなった。戦術に溺れることなく、自分たちの文化を大切にすることは大変有意義なことだった」との声が聞かれた。
 初日最後には、画面越しでのフィジカルトレーニング。慣れない環境でも、一生懸命にメモを取ったり、元気に身体を動かしたり、最後まで積極的に参加し、丸一日脳みそをフル回転させた、濃密な時間となった。
 一週間後の2日目はアウトプット。各校、チームに分かれ、自分のチームを分析し、KSF(Key Success Factor)、戦略をディスカッション。学年、ポジション関係なく、選手間で、たくさんの意見が交わされた。総仕上げに、各チームの今後の在り方や目標、戦略をプレゼンテーション。初日のインプットをもとに、学んだ内容を結び付け、頭の中でデッサンし、言葉にするというミッションに、果敢にチャレンジする学生たちの姿が見られた。2日間の締めくくりとして、元金沢総合高校バスケット部ヘッドコーチの星澤純一氏から、両校選手への講評とともに、「良い練習とは何か」、今後の練習の質を高めるヒントとエールが贈られた。日頃からのデータ分析の重要性や、良い選手には、文武両道のできる選手が多いといった講話に、選手たちも最後まで積極的に耳を傾けていた。
 合宿を通して、選手からは、「意見を共有することで、改めて自分たちのチームを知ることができた」「自分たちのチームを今まで知れていなかったことに気づき、改めて共通認識を持つことができた」との声が聞かれた。また、「バスケだけではなく、人生を通じて役立つ時間を過ごすことができた」などの感想も多く、今後の成長が楽しみだ。

 「HANDS UP CAMP」は現在も次回開催に向けて活動中。今後も、さらに競技・学校の枠を超えて拡大を続けていく。一人でも多くの学生アスリートが、次のステップへのきっかけを掴めるように、完全燃焼に向けて、これからも、「スポーツを止めるな」は挑戦を続けていく!

1252プロジェクト 日体大桜華高校にて生理とスポーツをテーマに授業を実施!

 こんにちは!スポーツを止めるな広報です。

 2022年4月13日に日本体育大学桜華高等学校にて、生理×スポーツをテーマにした1252プロジェクトの授業「1252Clubroom with 日本体育大学」を実施してきました。
今回は1252プロジェクトメンバーの伊藤、最上、佐々木に加えて、日本体育大学児童スポーツ教育学部教授の須永美歌子先生にも登壇頂き、女性アスリートのコンディショニングについてもお話頂きました!

 日本体育大学桜華高等学校は1958年に創立された日本体育大学の系列の女子校です。特にもスポーツに力を入れている学校であり、オリンピックやパラリンピックにも複数の選手を輩出しています。

 第1部の授業では総合スポーツコースの2~3年生に向けてクイズ形式で行われ、クイズを楽しみながらも身近である生理×スポーツの関連性、コンディショニングについて真剣に話に聞き入っている様子でした。生理について正しい知識を身につけようとしている様子が伝わってきました。

 第2部の授業では生徒24名が参加しました。生理にまつわる症状の深堀や、ワークショップ形式で生理に対して向き合ったり、生徒同士で悩みを解決するにはどうしたら良いのか話し合ったり、意見が活発に飛び交っていました。生理について今後どのように向き合っていくべきなのか真剣に考えている様子が伝わってきました。

 別室では指導者向けのワークショップも開催されましたが、女子学生との向き合いについて真剣に考えられており、学校全体として生理とスポーツの課題に向き合っていこうという強い思いを感じる授業でした!

須永美歌子先生(日本体育大学児童スポーツ教育学部教授)

 授業の後、須永先生に感想を伺いました。「実績や経験がある伊藤さんからも話をしていただくことで言葉に力が増したと思います。パフォーマンス向上のためにはコンディショニングが重要です。これまでコンディショニングの方法は男性のデータをもとに作られてきましたが、今日の話を聞いて生理がコンディションに関わることがわかったと思うので、自分の体と向き合い続けて欲しいです。」と語り、指導者に向けても「常に関心を持って情報をアップデートし続けて欲しいです。」と強く語って頂きました。

 1252では、今後も女子学生アスリートがスポーツをもっと安心して楽しめる環境づくりを目指していきます。ご関心のある方はぜひお気軽にお問合せください!

1252プロジェクト スポーツ庁長官の室伏広治さんと対談を行いました!

 こんにちは、スポーツを止めるな広報です。
先日1252プロジェクトは、スポーツ庁長官の室伏広治さんを表敬訪問させていただきました。

INNOVATION LEAGUE 2021コンテストの「ソーシャル・インパクト賞」を受賞

 一般社団法人スポーツを止めるなの活動の一つであり、女子学生アスリートに向けた生理とスポーツの教育/情報発信活動「1252プロジェクト」が、スポーツ庁とSPORTS TECH TOKYOが共催する【INNOVATION LEAGUE 2021 コンテスト】にて、「ソーシャル・インパクト賞」を受賞しました。

 授賞式が行われたデモデイでは、スポーツ庁長官・室伏広治さんからの総評にて、指導の中でも隅に置かれてしまっていた女性特有の生理とコンディショニングの重要さやこの活動によって女性アスリートが活躍する場が広がってくることへの期待などを話して頂きました。
この受賞を糧として、今後も元競泳日本代表の伊藤華英(当社団理事)を中心に、トップアスリートや医療・教育の専門家の方々と連携しながら、最新医療・教育分野の専門的・科学的知見を持って女子学生アスリートと指導者向けに教育・情報発信を行うハブとして活動していきます。 

スポーツ庁からも高く評価されている「1252プロジェクト」とは?

 今回、受賞のご縁から、スポーツ庁長官の室伏広治さんと対話する機会をいただき、「1252プロジェクト」について改めてご報告いたしました。

 1年間(52週)のうち、約12週は訪れる月経とそれに伴う体調の変化は、多くの女性アスリートにとって避けては通れない問題ですが、相談できる場や正しい知識を持つ機会が少ないことが現状です。
アスリートにとって、競技シーズンや試合のタイミングに合わせてコンディション・マネジメントが重要となります。1252プロジェクトでは、「Talk Up 1252」や「1252 Playbook」などオンラインメディアを通じた情報発信や運動部女子学生の月経に関する実態調査を実施したり、「1252 Clubroom」のような直接学生と対話・ワークショップを通じて生理に関する正しい知識を学び、共有できる場を作ってきました。こうした環境を整備していくことは、女子学生アスリートが生理期間中においてもスポーツ実施意欲を維持する助けとなり、長期的には妊娠・出産への悪影響の抑制にも繋がっていきます。

 1252では、今後もあらゆるセクターの方々と手を取り合いながら、女子学生アスリートがスポーツをもっと安心して楽しめる環境づくりを目指していきます。
ご関心のある方はぜひお気軽にお問合せください!

内村航平さん引退イベントの記念グッズを描いたNBA公認アーティスト田村大さんにお話を伺いました

3月12日に行われた体操界のレジェンド、内村航平さんの引退イベント。

(KOHEI UCHIMURA PROJECT http://uchimura-kohei.com/project/

 このイベントの記念グッズオークションの収益の一部がスポーツを止めるなに寄付を頂くことになりました。
 そこで、イベントの記念グッズを手掛けられたデジタルアーティストの田村大さんに、共同代表理事最上がお話を伺ってきました。

田村大 
イラストの世界大会であるISCAカリカチュア世界大会において総合優勝、世界一に輝く。
ペン・カラーマーカーを用いてダイナミックに手を動かして描く、躍動感あふれるスタイルを最も得意とする。
NBA公認イラストレーターを務める他、国内外の著名アスリート、著名ブランドと数多くのコラボレーションを果たしている。
https://dt-ltd.tokyo/dai.tamura

最上:「こんにちは。内村さんの引退イベントの余韻がまだありますね。」

田村:「はい、あの美しい着地がもう観れないかと思うと残念ですね。でも、本当に素晴らしかったです。」

最上:「いきなり本題に入ってしまいましたね。今日は田村さんが手がけた内村航平さんの引退記念アートについて伺っていきたいと思います。それでは最初に、内村航平さんのアートを作る上で気をつけたことを聞かせて下さい。」

田村:「体操界のキングで、美しさも兼ね備えた内村さんを、自身の持ち味である「躍動感」を以て描きたいと以前から思っていたため、プロジェクトをご一緒させていただくことが決まった時はとてもワクワクしました。
コラボレーションアートの制作に際しては、構図を決めるまでに試行錯誤を重ねました。内村さんと検討を開始した当初は、内村さんの「6種目やってこそ体操」という拘りから6点を描く方向で進めたのですが、最終的には引退イベントで「相棒」と語った鉄棒、そして中でも現役を通じてミリ単位まで拘ってきた着地のシーンを前面にすることを内村さんご本人の意向で決めました。

背景には鉄棒演技での一連の動作を添えて、静と動、力強さと滑らかさという対照的な要素で構成することで、着地の場面を際立たせるよう工夫しました。

引退イベントの前日の記者会見で内村さんにアートをお見せすることができて、会見の後には絵の感想を直接伺う機会があったのですが、前面と背景がそれぞれ「何年のどの大会なのか」を言い当てていたことが印象に残っています。」

最上:「一つの作品には様々な瞬間が凝縮されているんですね。内村さんとも作品を通じて繋がっているような、そんな雰囲気を感じ取りました。さて、内村さんの引退イベントを間近でご覧になって率直な感想をお聞かせください。」

田村:「イベント当日、最も思い入れがあると仰っていた最後の鉄棒の演技では見ていてドキドキしました。現役生活最後の着地を止められなかったことを受けて「だから THE FINALなんです」とコメントされていたのを聞いて、自身に厳しく結果に拘り続ける姿勢がかっこいいなと感じました。
演技に関しては、空中を高く舞って回転もしながら、常に姿勢が保たれていて美しかったです。あと、全ての種目が一発勝負で、これまでに世界中の注目が集まる場面で何度も着地を成功させてきたのは本当にすごいことだなと改めて感じました。」

最上:「本当にそうですよね。私は仲間の体操トップアスリート達が必死に盛り上げる姿を見て、内村さんは本当に愛されていて、リスペクトされていて、まさにレジェンドなんだなと再認識しました。いやあ、素晴らしかった。」

続いて、今回のオークションの収益の一部がスポーツを止めるなに還元されることに話題は移っていく。

田村:「今回のプロジェクトは自分自身、そして内村さん自身も初めてのNFTアートの取り組みになるため、1人でも多くの人に活動が届き、スポーツ界における新たな可能性を示すことにも繋がっていくと良いなと考えています。
これまでに多くのアスリートとコラボレーションをさせていただき、自分自身、スポーツに対してどのように貢献できるかを考えることは多くあったのですが、ミーティングで内村さんが「子どもたちをはじめとした多くの人々に体操の楽しさや素晴らしさを知ってもらいたい」と話されたのを聞いて共感しました。
検討を重ねていった結果として、コロナ禍以降、限られた学生生活の中で活動できないアスリートたちを支援する「スポーツを止めるな」さんへ寄付することを決めたので、思うような競技生活が送れていない学生の方々に少しでも貢献できたらと思っています。」

最上:「NFTという新たな取り組みを通じて、学生を支援して頂けたことは我々も本当に光栄ですし嬉しく思います。スポーツを止めるなとしても学生アスリートの支援を地道に重ねて参りますね。ありがとうございます。それでは最後に学生アスリートへのメッセージを頂ければと思います。」

田村:「僕自身、高校時代はバスケットボールに打ち込み、全力を尽くしました。それでもプロになるという当時の夢は叶わなかったのですが、ベストを尽くしたことできっぱりとバスケットボールのプロの道を諦めて、次の目標への切り替えができました。
皆さんも日々ベストを尽くして、後悔のない学生生活を送ってほしいなと思っています。」

最上:「ありがとうございます。今回の一連の取り組みを通じて、学生アスリートのみなさんが前を向ききっかけを持ってくれたら嬉しいですね。本日はお時間頂いてありがとうございました。」

田村:「ありがとうございました。」 

リアルな現物は内村さんご本人が所有。今回のオークションには1点限定で出品されている。。

オンライン夏合宿プログラム「HANDS UP CAMP」始動

コロナ禍における新たな部活動のカタチに挑戦

 『不完全燃焼を完全燃焼に』を合言葉に、スポーツを止めるなが実施した“短期集中型オンライン合宿プログラム「HANDS UP CAMP」”についてご紹介します。

 トップコーチから学ぶ戦略的・論理的思考、今こそ求められる学生アスリートのスキルアップとは何か。

 連日の新規感染者数の更新に、終わりの見えない緊急事態宣言。夏合宿の中止や練習時間の制限に部活動の現場からはあきらめの声が漏れ伝わってきます。
選手指導などで各地のグラウンドをまわる野澤も指導者や選手たちの苦悩を肌で感じていました。

 学生スポーツが完全に止まってしまった2020年。
一方、今年に入って学生スポーツは止まってはいないが、平常にも動いていない。
厳しい部活制限が続く公立校と強化を続ける強豪校の間では差が開く一方。
指導者と選手の間にも「しょうがない」というむなしさが漂っています。
野澤は「完全にスポーツが止まっていた昨年よりも閉塞感は強い。まずいぞ」と事態の悪化を懸念。
競技への向き合い方を考えることで学生アスリートも関係者も気持ちを高められるのでは…と、ひらめいたのがオンラインでの合宿プログラム「HANDS UP CAMP」でした。

 「夏合宿とは何か?を抽象化した時、『きっかけ」や『契機』であったと気づいた。夏合宿で伸びるのではなく、のちに夏合宿での経験がテコの役割を果たし飛躍的な成長につながる。ラグビーで言えば菅平(長野県)は夏合宿の代名詞。普段とは違う集団生活の中で過ごす濃密な時間からチームや競技に対する意識の変化が芽生えますよね。オンラインでそれを体感できないだろうか」。
野澤の発案に夏合宿の中止を決めた千葉県立千葉高ラグビー部が賛同。
プログラムの最終的なゴールは、選手自身が戦略戦術とアクションプランに対して根拠をもって言語化すること。
学ぶべきポイントは『チームカルチャー』『最先端の技術戦術』『知識を深める思考法』、そして選手同士が共通のベクトルへ進むための『コミュニケーションとリーダーシップ』という結論に至りました。
早速、野澤はその世界でのトップランナーたちに講師を依頼。

 そして8月6日、1泊2日の夏合宿が動きだしました。

いよいよ合宿がスタート!

 8月6日午前8時半、画面越しに集まる選手たちの表情は硬く、慣れないオンラインでのコミュニケーションに戸惑う生徒もちらほら。
そしていよいよ合宿がスタート!
9時から野澤による合宿の意義を問うセッション、続いて同社団共同代表理事の廣瀬俊朗によるリーダーシップのあり方へと続きました。

 クボタスピアーズや神戸製鋼コベルコスティーラーズといったトップチーム所属のコーチたちから学ぶ先進的な戦術。
ラグビーユースコーチの第一人者、里大輔さんからは最先端のムーブメント技術と知識をインプット。
リーダーシップやコミュニケーションを通したチームワークの向上を目指し、それらを繋ぎ合わせてアウトプットするための思考力やゴール設定などなど。
チームの強みや自身の個性、練習の意義を深く問い求める濃密なセッションが選手たちを思考と論理の世界へといざなっていきました。

 講師との対話とともにグループワークを繰り返し、時間を増すごとに意識の共有が深まりました。
矢野晴朗副主将は「考える力とはという講義で、『問いを定義し、広げて、くくる。確認することを通して大事なことは何かを考え、評価をする』というプロセスについて学んだ。ラグビーだけではなく、日常生活でも問いは人によって異なる。合宿中のグループワークではみんなの意見を集約して問いを定義することは難しかったが、学んだフレームワークを使うことで最後はまとめることができた」。

 野口将大副主将は「合宿ではいろんなことを学びやや整理が追いついていないところがあるが、一番印象に残ったのは勝つ準備の講義です。自分が目標とするベスト4をビジョンとして頭の中にしっかりと思い描くことができた。これからは一日一日、そのビジョンを実現するために努力したい」と目を輝かせていました。

 そんな充実感であふれる選手たちの姿に「同じ釜の飯を食う。その感覚を学びでも得られていた」と野澤や講師たちもオンライン合宿に確かな手応えを感じました。

 午後9時、初日の最後を飾るのはOBによるチームの歴史や文化の継承。
東京理科大ラグビー部3年の小柴稔輝さんらが県千葉ラグビー部の歴史や価値観を語り、現役選手たちとともにチームのあり方を醸成する時間となりました。
小柴さんは「高校生の頃にこんな学びの合宿があれば、チームも自分ももっと上を目指せただろう」と後輩たちを羨んでいました。

 2日目合宿は総仕上げとして各自の学びと目標、チームのあり方をプレゼンテーション。
内田琉主将は「オンライン夏合宿では、ラグビーのスキルにとどまらずコミュニケーションスキルや課題解決の方法も学んだ。今後、チームの目標であるベスト4を達成するために教わった論理的思考力を活かし、何が今必要なのか考え、具体的な行動に移したい。この2日間でチームの意識が変わり、秋の花園予選に向かっていく良いきっかけになった。キャプテンとしてみんなを引っ張り、この変化を継続させていきたい」と熱く語りました。

 自らの言葉で表現する力を得た選手たちの姿に、指導に当たる為成伸広監督も「コロナの影響で練習に制限が課される中では、チーム全員がビジョン・目標を共有することが難しかった。濃密な講義とグループワークにより学年に関係なく全員が積極的にディスカッションすることで選手たちは変化のきっかけを掴んだようだ。この意識を持続させるのが大切」とさらなる成長を期待。実りある合宿を終えました。

 「HANDS UP CAMP」は現在進行形でアップデート中。
チームや競技の枠を超えて学び合うことで生まれる選手のイノベーションこそが狙いです。
参加チームが増えればその可能性は無限に拡がります。
「このピンチをチャンスに変えてほしい」と野澤もエール。学生アスリートたちの完全燃焼に向け、スポーツを止めるなの挑戦はこれからも続きます。

選手がプレーをアピールするためのオンラインプラットフォーム「HANDS UP」

 スポーツを止めるなは、学生アスリートがより良い環境でスポーツに打ち込み楽しめるよう、全力でサポートしています。
その活動の一つとして、学生アスリートが自身のプレーを登録し次のステージの関係者にアピールができるオンラインプラットフォーム「HANDS UP」を開発しました。
全国の先生や監督・スカウトなど次のステージのチームも、動画で自らのチームを学生にアピールすることができます。

「自分の強みはなんだろう?」
「リクルーターはどこを見ているのだろう?」

 セルフプロデュースを考えること自体に教育的価値があり、これは誰にでも必要なことだと考えています。
もちろん、次のステージで競技を続けられることになれば、それはとても嬉しいことですが、自ら手を挙げる、動き出す社会になってきている中で、他人との違いを生む努力が芽生えれば、これからの人生を切り拓く力が身につくと思っています。

 そんな想いを込めてプラットフォーム名は「HANDS UP」。
手を挙げ、自らの未来をつかみとってもらうという意味を込めて命名しました。

【HANDS UPムービー公開!】アピールは難しい。けれど、そのトライアンドエラーが自己成長につながる

青春時代に味わった、アピールの失敗

 スポ止めメンバーのしぶです。本業を別に持ちながら、ボランティアとしてムービー制作やSNSを担当し活動しています。
 高校時代、私は陸上競技部に所属していました。その部は、全国大会出場レベルの選手もいて、強いチームへと成長する真っただ中。都大会出場に甘んじていた私も刺激を受け、より大きな大会に出場することを夢見て、練習に没頭していたのをよく覚えています。しかしながら、高3の春、ケガにより思うように練習ができぬまま、シーズンに突入。そして、不安と葛藤で弱音を吐き続けて、インターハイ本番、予選のレースでリレーのメンバーから外れ、最後の試合を終えました。
 大人になって振り返れば、当時の私は、不安を口にして「そんなことないよ」と言われることでしか、何かを発露することができなかったように思います。でも、あの時、十分に走れた自分がもっと前向きな発言とアピールができていたら?と思うと、そして、第三者が大丈夫、と太鼓判を押してくれていたら?と思うと、自身はもちろん、その後のチームの行く末も変わっていたかもしれません。

もし、当時の「あの時」を乗り越えるとしたら

 ここからは「たられば」ですが、もっと客観視できていたら自分の行動も変わっていたのでは、と思います。今であれば、スマートフォンの普及により、写真も動画も、インターネットも、より手軽で身近です。仲間と走っている姿を撮影してみたり、顧問と意見を交わしたり。卒業された先輩に映像を送って見てもらう、なんてことも。そういった行動で、コンディション以上に、自信を取り戻せていたかもしれません。

スポ止めメンバーのキーとなる行動力

 スポーツを止めるな の代表3人の話を聞いていて、ある日気付いたことがあります。彼らは、三者三様に、学生時代から「自ら選ぶ」という経験を積み重ね続けています。「練習メニューを自分たちで作って試合に勝った」「退部させられそうになった部員のために直談判をした」などなど。そして賛同者のみなさんも同じ。「転機になったのは、先生に頼み込んで個別メニューを作ってもらってから」「このまま終わるより、応援してくれた人たちによかったねと言ってもらいたい」。節々に自分で考えて行動した瞬間が刻み込まれています。

 そんなメンバーだからこそ、生まれたのが「#スポーツを止めるな」活動です。コロナ禍で試合ができなくても、自らをアピールし、次の進路を開拓していくムーブメント。そして2021年、「HANDS UP」というプレーアピールシステムが誕生しました。システムによって、より安全に。フォームを埋めることで、より明確に自己を見つめ、アピールできるように。そして見てもらえる環境を通じて新たな進路先の人々と繋がれるように。なにより、ここに登録するというアクションを大切にしてほしいと考えています。なかなか説明だけではイメージしにくいので、どんな願いがつまったシステムなのか、また、そもそものシステムの仕組みがわかる動画を作成しました。「HANDS UP」のブランドムービーを以下に載せますので、ぜひご覧ください。

“スポーツを止めるな”との出会い

 初めまして、“一般社団法人 スポーツを止めるな”にて広報のボランティアをしている大学3年の戸張征志と申します。
約8ヶ月間の“スポーツを止めるな”で活動をする中で学んだことや感じたことを今回書かせていただきます。

 “スポーツを止めるな“との出会いは学生コーチを務めている高校ラグビー部の社会人コーチから誘われたのがきっかけでした。
私自身、学生コーチとして高校生と日々接していた中で、新型コロナウィルスの影響で急に活動を制限され、思うように部活に打ち込めない学生を直接みていたので「何か自分に出来ることはないか」いう思いで活動に参加することを決めました。

 実際は、SNSを通して#ラグビーを止めるな(自分のプレー動画を編集しSNSにこのハッシュタグをつけ投稿することでリクルーターと繋がるムーブメント)を見ていたくらいで、どういった活動を行ってるかはその時は正直理解していませんでした。

 そんな中、青春の宝プロジェクト(学生の思い出の試合にトップアスリートの解説をつけてプレゼントする企画)に参加した際に、学生たちの純粋に喜ぶ姿を見て“スポーツを止めるな”の活動が学生スポーツをどのように支えているかを知ることができ、自分も具体的に何か企画して貢献してみたいと思うようになりました。

"スピード感に圧倒される日々"

 現在、“スポーツを止めるな”では、選手が安全にプレーをアピール出来るオンラインプラットフォーム「HANDS UP」や女性アスリートならではの悩みに向き合う「1252プロジェクト」など様々な活動を展開しています。そういった活動の1つ1つが決まっていくスピード感に毎回驚きを覚え、ベンチャー企業のようなダイナミックなプロセスを味わえている気がします。私の役割は、SNSを通して活動の報告やイベントの告知、報告を行うことです。自分自身の貢献は他の方々に比べれば少ないですが、学生の頃からこういった活動に携われていることを光栄に思います。SNSの可能性を感じると同時に、注意しなければいけないことなど、学ぶべきことも多いです。

 最後になりますが、私は大学入学と同時にずっとプレーしていたラグビーを辞めました。
しかし、今でも高校で同じ部活だった友人と会う際に話すことは、高校3年時の最後の大会についてです。
それだけ、私にとって学生スポーツが与えた影響は大きかったです。

 だからこそ、新型コロナウィルスの影響で思うように活動を出来ていない学生や、これからまさにスポーツをやりたいと思っている学生に対して、少しでも貢献できるようにこれからも頑張ってやっていきたいと思います。
これを機に私たち「スポーツを止めるな」の活動も少しでも知って頂ければ幸甚です。どうぞよろしくお願いいたします。

写真:筆者の高校3年時 神奈川県大会準決勝の様子