コラム

内村航平さん引退イベントの記念グッズを描いたNBA公認アーティスト田村大さんにお話を伺いました

3月12日に行われた体操界のレジェンド、内村航平さんの引退イベント。

(KOHEI UCHIMURA PROJECT http://uchimura-kohei.com/project/

 このイベントの記念グッズオークションの収益の一部がスポーツを止めるなに寄付を頂くことになりました。
 そこで、イベントの記念グッズを手掛けられたデジタルアーティストの田村大さんに、共同代表理事最上がお話を伺ってきました。

田村大 
イラストの世界大会であるISCAカリカチュア世界大会において総合優勝、世界一に輝く。
ペン・カラーマーカーを用いてダイナミックに手を動かして描く、躍動感あふれるスタイルを最も得意とする。
NBA公認イラストレーターを務める他、国内外の著名アスリート、著名ブランドと数多くのコラボレーションを果たしている。
https://dt-ltd.tokyo/dai.tamura

最上:「こんにちは。内村さんの引退イベントの余韻がまだありますね。」

田村:「はい、あの美しい着地がもう観れないかと思うと残念ですね。でも、本当に素晴らしかったです。」

最上:「いきなり本題に入ってしまいましたね。今日は田村さんが手がけた内村航平さんの引退記念アートについて伺っていきたいと思います。それでは最初に、内村航平さんのアートを作る上で気をつけたことを聞かせて下さい。」

田村:「体操界のキングで、美しさも兼ね備えた内村さんを、自身の持ち味である「躍動感」を以て描きたいと以前から思っていたため、プロジェクトをご一緒させていただくことが決まった時はとてもワクワクしました。
コラボレーションアートの制作に際しては、構図を決めるまでに試行錯誤を重ねました。内村さんと検討を開始した当初は、内村さんの「6種目やってこそ体操」という拘りから6点を描く方向で進めたのですが、最終的には引退イベントで「相棒」と語った鉄棒、そして中でも現役を通じてミリ単位まで拘ってきた着地のシーンを前面にすることを内村さんご本人の意向で決めました。

背景には鉄棒演技での一連の動作を添えて、静と動、力強さと滑らかさという対照的な要素で構成することで、着地の場面を際立たせるよう工夫しました。

引退イベントの前日の記者会見で内村さんにアートをお見せすることができて、会見の後には絵の感想を直接伺う機会があったのですが、前面と背景がそれぞれ「何年のどの大会なのか」を言い当てていたことが印象に残っています。」

最上:「一つの作品には様々な瞬間が凝縮されているんですね。内村さんとも作品を通じて繋がっているような、そんな雰囲気を感じ取りました。さて、内村さんの引退イベントを間近でご覧になって率直な感想をお聞かせください。」

田村:「イベント当日、最も思い入れがあると仰っていた最後の鉄棒の演技では見ていてドキドキしました。現役生活最後の着地を止められなかったことを受けて「だから THE FINALなんです」とコメントされていたのを聞いて、自身に厳しく結果に拘り続ける姿勢がかっこいいなと感じました。
演技に関しては、空中を高く舞って回転もしながら、常に姿勢が保たれていて美しかったです。あと、全ての種目が一発勝負で、これまでに世界中の注目が集まる場面で何度も着地を成功させてきたのは本当にすごいことだなと改めて感じました。」

最上:「本当にそうですよね。私は仲間の体操トップアスリート達が必死に盛り上げる姿を見て、内村さんは本当に愛されていて、リスペクトされていて、まさにレジェンドなんだなと再認識しました。いやあ、素晴らしかった。」

続いて、今回のオークションの収益の一部がスポーツを止めるなに還元されることに話題は移っていく。

田村:「今回のプロジェクトは自分自身、そして内村さん自身も初めてのNFTアートの取り組みになるため、1人でも多くの人に活動が届き、スポーツ界における新たな可能性を示すことにも繋がっていくと良いなと考えています。
これまでに多くのアスリートとコラボレーションをさせていただき、自分自身、スポーツに対してどのように貢献できるかを考えることは多くあったのですが、ミーティングで内村さんが「子どもたちをはじめとした多くの人々に体操の楽しさや素晴らしさを知ってもらいたい」と話されたのを聞いて共感しました。
検討を重ねていった結果として、コロナ禍以降、限られた学生生活の中で活動できないアスリートたちを支援する「スポーツを止めるな」さんへ寄付することを決めたので、思うような競技生活が送れていない学生の方々に少しでも貢献できたらと思っています。」

最上:「NFTという新たな取り組みを通じて、学生を支援して頂けたことは我々も本当に光栄ですし嬉しく思います。スポーツを止めるなとしても学生アスリートの支援を地道に重ねて参りますね。ありがとうございます。それでは最後に学生アスリートへのメッセージを頂ければと思います。」

田村:「僕自身、高校時代はバスケットボールに打ち込み、全力を尽くしました。それでもプロになるという当時の夢は叶わなかったのですが、ベストを尽くしたことできっぱりとバスケットボールのプロの道を諦めて、次の目標への切り替えができました。
皆さんも日々ベストを尽くして、後悔のない学生生活を送ってほしいなと思っています。」

最上:「ありがとうございます。今回の一連の取り組みを通じて、学生アスリートのみなさんが前を向ききっかけを持ってくれたら嬉しいですね。本日はお時間頂いてありがとうございました。」

田村:「ありがとうございました。」 

リアルな現物は内村さんご本人が所有。今回のオークションには1点限定で出品されている。。

オンライン夏合宿プログラム「HANDS UP CAMP」始動

コロナ禍における新たな部活動のカタチに挑戦

 『不完全燃焼を完全燃焼に』を合言葉に、スポーツを止めるなが実施した“短期集中型オンライン合宿プログラム「HANDS UP CAMP」”についてご紹介します。

 トップコーチから学ぶ戦略的・論理的思考、今こそ求められる学生アスリートのスキルアップとは何か。

 連日の新規感染者数の更新に、終わりの見えない緊急事態宣言。夏合宿の中止や練習時間の制限に部活動の現場からはあきらめの声が漏れ伝わってきます。
選手指導などで各地のグラウンドをまわる野澤も指導者や選手たちの苦悩を肌で感じていました。

 学生スポーツが完全に止まってしまった2020年。
一方、今年に入って学生スポーツは止まってはいないが、平常にも動いていない。
厳しい部活制限が続く公立校と強化を続ける強豪校の間では差が開く一方。
指導者と選手の間にも「しょうがない」というむなしさが漂っています。
野澤は「完全にスポーツが止まっていた昨年よりも閉塞感は強い。まずいぞ」と事態の悪化を懸念。
競技への向き合い方を考えることで学生アスリートも関係者も気持ちを高められるのでは…と、ひらめいたのがオンラインでの合宿プログラム「HANDS UP CAMP」でした。

 「夏合宿とは何か?を抽象化した時、『きっかけ」や『契機』であったと気づいた。夏合宿で伸びるのではなく、のちに夏合宿での経験がテコの役割を果たし飛躍的な成長につながる。ラグビーで言えば菅平(長野県)は夏合宿の代名詞。普段とは違う集団生活の中で過ごす濃密な時間からチームや競技に対する意識の変化が芽生えますよね。オンラインでそれを体感できないだろうか」。
野澤の発案に夏合宿の中止を決めた千葉県立千葉高ラグビー部が賛同。
プログラムの最終的なゴールは、選手自身が戦略戦術とアクションプランに対して根拠をもって言語化すること。
学ぶべきポイントは『チームカルチャー』『最先端の技術戦術』『知識を深める思考法』、そして選手同士が共通のベクトルへ進むための『コミュニケーションとリーダーシップ』という結論に至りました。
早速、野澤はその世界でのトップランナーたちに講師を依頼。

 そして8月6日、1泊2日の夏合宿が動きだしました。

いよいよ合宿がスタート!

 8月6日午前8時半、画面越しに集まる選手たちの表情は硬く、慣れないオンラインでのコミュニケーションに戸惑う生徒もちらほら。
そしていよいよ合宿がスタート!
9時から野澤による合宿の意義を問うセッション、続いて同社団共同代表理事の廣瀬俊朗によるリーダーシップのあり方へと続きました。

 クボタスピアーズや神戸製鋼コベルコスティーラーズといったトップチーム所属のコーチたちから学ぶ先進的な戦術。
ラグビーユースコーチの第一人者、里大輔さんからは最先端のムーブメント技術と知識をインプット。
リーダーシップやコミュニケーションを通したチームワークの向上を目指し、それらを繋ぎ合わせてアウトプットするための思考力やゴール設定などなど。
チームの強みや自身の個性、練習の意義を深く問い求める濃密なセッションが選手たちを思考と論理の世界へといざなっていきました。

 講師との対話とともにグループワークを繰り返し、時間を増すごとに意識の共有が深まりました。
矢野晴朗副主将は「考える力とはという講義で、『問いを定義し、広げて、くくる。確認することを通して大事なことは何かを考え、評価をする』というプロセスについて学んだ。ラグビーだけではなく、日常生活でも問いは人によって異なる。合宿中のグループワークではみんなの意見を集約して問いを定義することは難しかったが、学んだフレームワークを使うことで最後はまとめることができた」。

 野口将大副主将は「合宿ではいろんなことを学びやや整理が追いついていないところがあるが、一番印象に残ったのは勝つ準備の講義です。自分が目標とするベスト4をビジョンとして頭の中にしっかりと思い描くことができた。これからは一日一日、そのビジョンを実現するために努力したい」と目を輝かせていました。

 そんな充実感であふれる選手たちの姿に「同じ釜の飯を食う。その感覚を学びでも得られていた」と野澤や講師たちもオンライン合宿に確かな手応えを感じました。

 午後9時、初日の最後を飾るのはOBによるチームの歴史や文化の継承。
東京理科大ラグビー部3年の小柴稔輝さんらが県千葉ラグビー部の歴史や価値観を語り、現役選手たちとともにチームのあり方を醸成する時間となりました。
小柴さんは「高校生の頃にこんな学びの合宿があれば、チームも自分ももっと上を目指せただろう」と後輩たちを羨んでいました。

 2日目合宿は総仕上げとして各自の学びと目標、チームのあり方をプレゼンテーション。
内田琉主将は「オンライン夏合宿では、ラグビーのスキルにとどまらずコミュニケーションスキルや課題解決の方法も学んだ。今後、チームの目標であるベスト4を達成するために教わった論理的思考力を活かし、何が今必要なのか考え、具体的な行動に移したい。この2日間でチームの意識が変わり、秋の花園予選に向かっていく良いきっかけになった。キャプテンとしてみんなを引っ張り、この変化を継続させていきたい」と熱く語りました。

 自らの言葉で表現する力を得た選手たちの姿に、指導に当たる為成伸広監督も「コロナの影響で練習に制限が課される中では、チーム全員がビジョン・目標を共有することが難しかった。濃密な講義とグループワークにより学年に関係なく全員が積極的にディスカッションすることで選手たちは変化のきっかけを掴んだようだ。この意識を持続させるのが大切」とさらなる成長を期待。実りある合宿を終えました。

 「HANDS UP CAMP」は現在進行形でアップデート中。
チームや競技の枠を超えて学び合うことで生まれる選手のイノベーションこそが狙いです。
参加チームが増えればその可能性は無限に拡がります。
「このピンチをチャンスに変えてほしい」と野澤もエール。学生アスリートたちの完全燃焼に向け、スポーツを止めるなの挑戦はこれからも続きます。

選手がプレーをアピールするためのオンラインプラットフォーム「HANDS UP」

 スポーツを止めるなは、学生アスリートがより良い環境でスポーツに打ち込み楽しめるよう、全力でサポートしています。
その活動の一つとして、学生アスリートが自身のプレーを登録し次のステージの関係者にアピールができるオンラインプラットフォーム「HANDS UP」を開発しました。
全国の先生や監督・スカウトなど次のステージのチームも、動画で自らのチームを学生にアピールすることができます。

「自分の強みはなんだろう?」
「リクルーターはどこを見ているのだろう?」

 セルフプロデュースを考えること自体に教育的価値があり、これは誰にでも必要なことだと考えています。
もちろん、次のステージで競技を続けられることになれば、それはとても嬉しいことですが、自ら手を挙げる、動き出す社会になってきている中で、他人との違いを生む努力が芽生えれば、これからの人生を切り拓く力が身につくと思っています。

 そんな想いを込めてプラットフォーム名は「HANDS UP」。
手を挙げ、自らの未来をつかみとってもらうという意味を込めて命名しました。

【HANDS UPムービー公開!】アピールは難しい。けれど、そのトライアンドエラーが自己成長につながる

青春時代に味わった、アピールの失敗

 スポ止めメンバーのしぶです。本業を別に持ちながら、ボランティアとしてムービー制作やSNSを担当し活動しています。
 高校時代、私は陸上競技部に所属していました。その部は、全国大会出場レベルの選手もいて、強いチームへと成長する真っただ中。都大会出場に甘んじていた私も刺激を受け、より大きな大会に出場することを夢見て、練習に没頭していたのをよく覚えています。しかしながら、高3の春、ケガにより思うように練習ができぬまま、シーズンに突入。そして、不安と葛藤で弱音を吐き続けて、インターハイ本番、予選のレースでリレーのメンバーから外れ、最後の試合を終えました。
 大人になって振り返れば、当時の私は、不安を口にして「そんなことないよ」と言われることでしか、何かを発露することができなかったように思います。でも、あの時、十分に走れた自分がもっと前向きな発言とアピールができていたら?と思うと、そして、第三者が大丈夫、と太鼓判を押してくれていたら?と思うと、自身はもちろん、その後のチームの行く末も変わっていたかもしれません。

もし、当時の「あの時」を乗り越えるとしたら

 ここからは「たられば」ですが、もっと客観視できていたら自分の行動も変わっていたのでは、と思います。今であれば、スマートフォンの普及により、写真も動画も、インターネットも、より手軽で身近です。仲間と走っている姿を撮影してみたり、顧問と意見を交わしたり。卒業された先輩に映像を送って見てもらう、なんてことも。そういった行動で、コンディション以上に、自信を取り戻せていたかもしれません。

スポ止めメンバーのキーとなる行動力

 スポーツを止めるな の代表3人の話を聞いていて、ある日気付いたことがあります。彼らは、三者三様に、学生時代から「自ら選ぶ」という経験を積み重ね続けています。「練習メニューを自分たちで作って試合に勝った」「退部させられそうになった部員のために直談判をした」などなど。そして賛同者のみなさんも同じ。「転機になったのは、先生に頼み込んで個別メニューを作ってもらってから」「このまま終わるより、応援してくれた人たちによかったねと言ってもらいたい」。節々に自分で考えて行動した瞬間が刻み込まれています。

 そんなメンバーだからこそ、生まれたのが「#スポーツを止めるな」活動です。コロナ禍で試合ができなくても、自らをアピールし、次の進路を開拓していくムーブメント。そして2021年、「HANDS UP」というプレーアピールシステムが誕生しました。システムによって、より安全に。フォームを埋めることで、より明確に自己を見つめ、アピールできるように。そして見てもらえる環境を通じて新たな進路先の人々と繋がれるように。なにより、ここに登録するというアクションを大切にしてほしいと考えています。なかなか説明だけではイメージしにくいので、どんな願いがつまったシステムなのか、また、そもそものシステムの仕組みがわかる動画を作成しました。「HANDS UP」のブランドムービーを以下に載せますので、ぜひご覧ください。

“スポーツを止めるな”との出会い

 初めまして、“一般社団法人 スポーツを止めるな”にて広報のボランティアをしている大学3年の戸張征志と申します。
約8ヶ月間の“スポーツを止めるな”で活動をする中で学んだことや感じたことを今回書かせていただきます。

 “スポーツを止めるな“との出会いは学生コーチを務めている高校ラグビー部の社会人コーチから誘われたのがきっかけでした。
私自身、学生コーチとして高校生と日々接していた中で、新型コロナウィルスの影響で急に活動を制限され、思うように部活に打ち込めない学生を直接みていたので「何か自分に出来ることはないか」いう思いで活動に参加することを決めました。

 実際は、SNSを通して#ラグビーを止めるな(自分のプレー動画を編集しSNSにこのハッシュタグをつけ投稿することでリクルーターと繋がるムーブメント)を見ていたくらいで、どういった活動を行ってるかはその時は正直理解していませんでした。

 そんな中、青春の宝プロジェクト(学生の思い出の試合にトップアスリートの解説をつけてプレゼントする企画)に参加した際に、学生たちの純粋に喜ぶ姿を見て“スポーツを止めるな”の活動が学生スポーツをどのように支えているかを知ることができ、自分も具体的に何か企画して貢献してみたいと思うようになりました。

"スピード感に圧倒される日々"

 現在、“スポーツを止めるな”では、選手が安全にプレーをアピール出来るオンラインプラットフォーム「HANDS UP」や女性アスリートならではの悩みに向き合う「1252プロジェクト」など様々な活動を展開しています。そういった活動の1つ1つが決まっていくスピード感に毎回驚きを覚え、ベンチャー企業のようなダイナミックなプロセスを味わえている気がします。私の役割は、SNSを通して活動の報告やイベントの告知、報告を行うことです。自分自身の貢献は他の方々に比べれば少ないですが、学生の頃からこういった活動に携われていることを光栄に思います。SNSの可能性を感じると同時に、注意しなければいけないことなど、学ぶべきことも多いです。

 最後になりますが、私は大学入学と同時にずっとプレーしていたラグビーを辞めました。
しかし、今でも高校で同じ部活だった友人と会う際に話すことは、高校3年時の最後の大会についてです。
それだけ、私にとって学生スポーツが与えた影響は大きかったです。

 だからこそ、新型コロナウィルスの影響で思うように活動を出来ていない学生や、これからまさにスポーツをやりたいと思っている学生に対して、少しでも貢献できるようにこれからも頑張ってやっていきたいと思います。
これを機に私たち「スポーツを止めるな」の活動も少しでも知って頂ければ幸甚です。どうぞよろしくお願いいたします。

写真:筆者の高校3年時 神奈川県大会準決勝の様子